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50 旧約聖書民数記31章1節〜33章56節 2008/04/22
(1)ミディアン遠征(31章1〜13節)
「主」 ヤハウエ。イスラエルの神。
「モーセ」 イスラエルの指導者。
「イスラエル」
@ ヤコブの別名。
A 民族名。
B 王国名。
ここではAを指す。
「ミディアン」
@ アブラハムとケトラの間に生まれた第4子。
A @のミディアンから出たという「ミディアン人」は、遊牧民、旅商人であり、時に略奪を働いたりした。旧約聖書出エジプト記2章11〜22節によると、モーセは、ミディアンの祭司エトロの娘ツィポラと結婚した。
B 「ミディアン地方」は、紅海(アカバ湾)の東からモアブの南にわたる北西アラビアの砂漠地帯。聖書巻末地図2参照。
ここではAを指す。
「ミディアン人から受けた仕打ち」 旧約聖書民数記25章16〜18節。
@ ミディアン人の誘惑により、イスラエルの民がペオルのバアルという異教の神を礼拝したこと。
A ミディアンの女たちと淫行をしたこと。
B そのために神罰が下って、2万4千人もの民が死なねばならなかったこと。
「先祖の列に加えられる」 先に世を去った者との再会という神話的表現。
ただし、ユダヤ教、キリスト教には、霊魂不滅の思想はない。復活の命に生かされているのは現在および将来のことであり、死後だけのことではない。
「主のために報復する」 主の報復をする。主が報復するのを人間が代行する。
「祭司」 いけにえを献げ、律法を教えるために、神によって聖別された者。
「エルアザル」
@ アロンの第3子。レビ人の代表者たちの代表。2代目の大祭司。
A レビ人メラリの子であるマフリの子。
B キリアト・エアリムの人であるアビナダブの子。
C アホア人ドドの子。ダビデの勇士の一人。
D ピネハスの子。エズラ時代の祭司。
E パルオシュの一族の一人。異民族の妻を離縁するようエズラに諭されて同意した。
F ネヘミヤ時代のエルサレム城壁の落成式にあたって、詠唱者として歌った祭司たちの一人。
G マリアの夫ヨセフの曽祖父。
ここでは@を指す。
「ピネハス」
@ エルアザルの子で、アロンの孫。士師の時代の初期には、祭司としての職務を執り行なった。
A 大祭司エリの二人の息子のうちの弟。ピネハスの孫イカボドはサウルの治世の祭司であった。
B エズラの時代の祭司エルアザルの父。
ここでは@を指す。
「エビ」 ミディアンの5人の王の一人。
「レケム」
@ ミディアンの5人の王の一人。
A カレブの子孫。ヘブロンの子。シャマイの父。
B マナセの子孫。マキルの子シェレシュの子。
ここでは@を指す。
「ツル」
@ ミディアンの5人の王の一人。イスラエル人を誘惑して淫行を行なわせたため殺された女コズビの父。
A エヒエルの子。ギブオンの兄弟。エルサレムに住んでいた。
ここでは@を指す。
「フル」
@ ミディアンの5人の王の一人。
A アロンと並ぶモーセの協力者。
B ユダの子孫。ベツァルエルの祖父。カレブとエフラトの間に生まれた子。旧約聖書歴代誌上2章50節、4章4節では「エフラタ」の長男となっている。
C ソロモンがイスラエル全土に置いた12人の知事のうちの一人でエフライム山地を統治したベン・フルの父。
D ネヘミヤ時代にエルサレムの城壁を修理したエルサレムの半地区の区長レファヤの父。
E ノアの子セムの子孫アラムの子孫。
ここでは@を指す。
「レバ」 ミディアンの5人の王の一人。
「ベオル」
@ イスラエル王制時代以前のエドムの町ディンハバの最初の王ベラの父。
A 占い師バラムの父。
ここではAを指す。
「バラム」 ペトルの占い師。ベオルの子。
かつてイスラエルに対する祝福の託宣をしたバラムも殺される。陰でミディアン人を操ってイスラエルの民を誘惑し、罪をおかさせた罰である。
「ヨルダン川」 パレスチナ最大の川。北のヘルモン山(聖書巻末地図3参照)に端を発し、ガリラヤ湖を経て南下し、死海に流れ込む。全長は直線距離で約217キロ(阪神間から名古屋付近まで)、蛇行距離では400キロ。ヨルダン峡谷の幅は、5キロ(およそ小林と西宮北口間)から20キロ(直線で小林と大阪城間)まで変化している。
キリストが洗礼者ヨハネから洗礼(バプテスマ)を受けたのはヨルダン川であった。
「エリコ」 死海(塩の海)に注ぐヨルダン河口から北西約16キロにある、堅固に城塞化された町。聖書巻末地図2および3参照。
「モアブ」
@ ロトの姉娘と父ロトの間に生まれた子。ロトと二人の娘との父子相姦物語は、旧約聖書創世記19章30〜38節に記されている。
A 死海の東に王国を築いた民族。イスラエルのカナン侵入当時、優れた農耕文化を持っていた。
B モアブ人の占めた死海東方の領土。聖書巻末地図2および3参照。
ここではABを指す。
「共同体」 会議。会衆。集会。つどい。
(2)捕虜の処置(31章14〜18節)
「千人隊長、百人隊長」 千人・百人を一隊とする指揮官。
「ペオル」 ネボ山(ピスガ山)の近くにあるモアブの山。シティムの南東4キロのところにある、現在のキルベト・エ・シーク・ジャーイルではないかと考えられている。聖書巻末地図2参照。
「ペオルの事件」 旧約聖書民数記25章16〜18節。
@ ミディアン人の誘惑により、イスラエルの民がペオルのバアルという異教の神を礼拝したこと。
A ミディアンの女たちと淫行をしたこと。
B そのために神罰が下って、2万4千人もの民が死なねばならなかったこと。
通常の戦争では、女性と子どもは殺さず捕虜にされたが、イスラエルの年来の敵に対しては、女性も子どもも皆殺しにされた。
(3)帰還兵の清め(31章19〜24節)
戦争を経験した者は、憎しみと殺戮によって、心と体に傷とけがれを負っている。それをいやし、清めなければ、正常な生活に戻れない。その清めといやしは、宗教の仕事である。
(4)分捕り品分配の法則(31章25〜31節)
「戦いに出た勇士と共同体全体とに折半」 戦闘員と非戦闘員の取り分は同じ。
「五百について一」 500分の1。
「献納物」 擧祭。いけにえの胸を高くささげ、ふたたび下におく。一度神にささげたものを、ふたたび神よりの贈り物として受け取ることを表わす。
「五十について一」 50分の1。
「レビ人」 ヤコブの子レビの子孫。祭司の補助をする職務が与えられている。
分捕り品を分ける方法
@ 戦闘員と非戦闘員とで2分する。
A 戦闘員は自分の分け前の500分の1を祭司に渡す。
B 非戦闘員は分け前の50分の1をレビ人に渡す。
(5)分配された実数(31章32〜47節)
「兵士が略奪したものの残り」 兵士が、戦闘中または帰還途中で処分したり、自分の所有にしたりしたもの以外。
「人は一万六千人」 戦闘員の分け前とされた女の数。その倍数の3万2千人の女が捕虜となった。
「主にささげる分は三十二人」 祭司に与えられた男を知らない女の数。女
奴隷として使ったか、あるいは、規定の値積りに従ってお金に換えたかは不明。レビ人に与えられた分も同様。
3万2千人の女が生き残ったとすれば、殺された男女の数は、10万人以上になる。日本の広島に落とされた原爆による死者が14万人と言われるが、ミディアン遠征による殺戮の規模は原爆の被害に近かったことになる。
(6)指揮官たちの献げ物(31章48〜54節)
「わたしたち自身の贖い」 指揮官が兵士の人員点呼をしたので、神の罰をこうむらないためのつぐない、または戦勝の感謝のささげ物。
「シェケル」 重さの単位。約11.4グラム。
「一万六千七百五十シェケル」 約180キログラム。金の相場は不詳であるが、仮に1グラムが2000円ぐらいとすれば、2000×180000=360000000円、つまり指揮官たちは3億6千万円をささげたことになる。
「略奪したもの」 貴金属の装飾品。
(7)ルベン族とガド族の要請(32章1〜5節)
ルベン族とガド族が定住したいと願う土地は、ヨルダン川の東岸にあり、約束の地カナンは、ヨルダン川西岸であった。
「ルベン」 ヤコブ(イスラエル)の長男。
「ガド」
@ ヤコブとジルパとの第1子。
A 部族名。
B ダビデ時代の預言者。
ここではAを指す。
「ヤゼル」 ヨルダン川下流の東20キロ、ヘシュボンの北28キロにある町。
「ギレアド」
@ マキルの子で、マナセの孫。
A 士師エフタの父。
B ガドの子孫。
C 部族の名。
D ヨルダン川東の山地。聖書巻末地図3参照。
ここではDを指す。
「アタロト」
@ ヨルダン東岸のモアブの町。聖書巻末地図3参照。
A エフライムの南東、ベニヤミンとの境界の町。
B エフライムの町。
ここでは@を指す。
「ディボン」
@ ユダ領の町。
A ガド領の町。
ここではAを指す。
「ヤゼル」 ヨルダン川下流の東20キロ、ヘシュボンの北28キロにある町。
「ニムラ」 ヨルダン川東部のヘシュボンの町の一つ。
「ヘシュボン」 ヨルダン川の東方約29キロの町。エリコとほぼ同緯度。エルサレムから東へ約60キロ、ヤボク川とアルノン川の間にある。聖書巻末地図2参照。
「エルアレ」 ヨルダン川の東、ヘシュボンの北方約3キロの町。
「セバム」 モアブの北西、ネボとヘシュボンの間の町。
「ネボ」
@ ネボ山の付近のモアブ人の町。聖書巻末地図2参照。
A エルサレムの南西15キロの町
ここでは@を指す。
「ベオン」 ヨルダン川東の町。メデバの南西8キロ、死海の東方14キロ。聖書巻末地図2参照。
(8)モーセの叱責(32章6〜15節)
ルベン族とガド族の願いに対してモーセの怒りが爆発する。
「カデシュ・バルネア」 イスラエルの南の境を形成するパランの荒れ野にある町。聖書巻末地図2参照。
「エシュコルの谷」 「ぶどうの房の谷」の意。ヘブロンの北西5キロ。
「アブラハム」 テラの子。
故郷カルデア(現イラク)のウルを離れて、神の命ずるままに、「行き先も知らずに」(新約聖書ヘブライじん人への手紙11章8節)出発し、約束の地カナン(現パレスチナ)に入り、イサクの父となった。
「イサク」 アブラハムの子で、エサウとヤコブの父。
「ヤコブ」
@ イサクとリベカの子。のちにイスラエルと改名。
A イエスの母マリアの夫ヨセフの父。
B 十二使徒の一人。ゼベダイの子。使徒ヨハネの兄弟。
C 十二使徒の一人。アルファイの子。母はマリア(イエスの母マリアとは別人)。
D イエスの兄弟。
E 使徒ユダの父。
「ケナズ」 エサウの長男エリファズの息子でエドム人の首長。
「エフネ」
@ カレブの父。
A アシェルの子孫。イエテルの子。
ここでは@を指す。
「カレブ」
@ ケナズ人エフネの子。
A ヘツロンの子エラフメエル兄弟。
ここでは@を指す。
「ヌン」 エフライムの子孫。ヨシュアの父。
「ヨシュア」
@ エフライム族の家系の長エリシャマの子ヌンの子。ホシェアと呼ばれていたが、モーセによってヨシュアと改名された。
A ベト・シェメシュの人。
B ヨシヤ王の時のエルサレムの町の長。
C ヨツァダクの子。エルサレム神殿の再建の時、ユダの総督ゼルバベルのもとで大祭司だった。
D イエス・キリストの先祖の一人。
ここでは@を指す。
(6)ルベン族とガド族の誓い(32章16〜19節)
40年前、イスラエルの民が、パランの荒れ野のカデシュまで来たとき、「もうエジプトに帰ろう」と言ってモーセとアロンに反抗したが、ヨシュアとカレブだけは、民を説得して、「神を信じて、恐れず約束の地に入ろう」と言った。人々はそれに耳を貸さず、ヨシュアとカレブを石で打ち殺そうとしたのであった。しかし、今は、ルベン族とガド族は、モーセの怒りによって反省し、「率先してイスラエルのために戦う」と言い出した。
(7)モーセの承認(32章20〜27節)
ルベン族とガド族が定住したいと願う土地は、ヨルダン川の東岸にあり、約束の地カナンは、ヨルダン川西岸であった。しかし、ヨルダン川東岸の征服には参加すると約束し、征服が終わったあとで、ヨルダン川西岸に戻ってくると言う。モーセは妥協する。
(8)ルベン族とガド族の所有地(32章28〜32節)
カナン侵攻、土地分配などの実際の任務に当たるのは、モーセの後継者ヨシュアである。
(9)ガド族、ルベン族、マナセの半部族に与えられた町々(32章33〜42節)
「ヨセフ」
@ ヤコブの第11子。兄弟から憎まれ、エジプトに売られる。そこで宰相となり、飢饉に悩むヤコブ一家をエジプトに移住させる。ヨセフからマナセ族とエフライム族が出た。
A 部族名。通常ヨセフ族の代わりにエフライム族とマナセ族が部族名として用いられる。
B イサカル族で、イグアルの父。
C アサフの子。
D バビロン捕囚から帰還後、エズラの勧告に従って異民族の妻を離縁したバニ族の一人。(旧約聖書エズラ記10章42節)
E ヨヤキム時代の、シェバンヤけ家の祭司。
F イエス・キリストの祖先の一人。(新約聖書ルカによる福音書3章24節)
G イエス・キリストの祖先の一人。(新約聖書ルカによる福音書3章30節)
H イエス・キリストの母マリアの夫。
I イエス・キリストの兄弟。(新約聖書マタイによる福音書13章55節)
J イエス・キリストの母マリアの姉妹で、名をマリアという女性の子。(新約聖書マタイによる福音書27章56節)
K アリマタヤ出身の金持ち。イエス・キリストの遺体を引き取った。(新約聖書マタイによる福音書27章56節)
L バルサバともユストとも呼ばれるヨセフ。
M バルナバと呼ばれるヨセフ。
ここでは@を指す。
「マナセ」
@ ヨセフの長男。エフライムの兄。
A 部族名。
B 南王国ユダの王。
ここでは@を指す。
「半部族」 部族の半分。聖書巻末地図2の2箇所あるマナセの土地参照。
「アモリ人」 パレスチナ先住民の総称。
「シホン」 アモリ人の王で、ヘシュボンに首都を置いていた。彼は、モアブ人から、ヘシュボンとアルノンの間の地域を奪い取っていた。
「バシャン」 アモリ人の王オグの国土。ヨルダン川の東、ヤボク川からヘルモン山までの間、キネレト湖(ガリラヤ湖)からハウラン山脈までの地帯。聖書巻末地図5参照。
「オグ」 バシャンの王。巨人の種族レファイム人の唯一の生き残り。オグの寝台は鉄製で、長さ4メートル、幅1.8メートルだったとされる。
「アロエル」
@ モアブの町。東方から死海中部に流れ込むアルノン川の北岸。聖書巻末地図5参照。
A アンモン人の町。
B ユダ領ネゲブのアロエル。
ここでは@を指す。
「アトロト・ショファン」 ヨルダン川東部のアモリ人の王シホンの領土。
「ヨグボハ」 ヤゼルの東15キロにある。
「ベト・ニムラ」 ヨルダン川東部のヘシュボンの町。聖書巻末地図2参照。
「ベト・ハラン」 ヨルダン川東部のアモリ人の町。
「キルヤタイム」
@ ヨルダン川東部のモアブの町。
A ナフタリ族の土地。
ここでは@を指す。
「バアル・メオン」 ヨルダン川東部のアモリ人の王シホンの町。
「シブマ」 ヨルダン川東部の平原にある町。
「マキル」
@ ヨセフの子マナセの長子。ギレアドの父。
A ヨルダンの東、ロ・デバルの人で、アミエルの子。
ここでは@を指す。
「ヤイル」
@ ユダ族ヘツロンの子孫。セグブの子。
A ギレアド人の士師。
ここでは@を指す。
「ハボト・ヤイル」 ギレアドとバシャンの境界あたりにあった町々。
「ノバ」
@ マナセ族。
A ガリラヤ湖(キネレト湖)の東85キロ付近。
ここでは@を指す。
(10)序言(33章1〜4節)
「アロン」 モーセの兄。アロンはホル山(エドムの国境の山。聖書巻末地図2参照)の山頂で死ぬ。享年123歳。三人の兄弟姉妹のうち、すでに姉ミリアムは死に、その後兄アロンが死に、残るは弟モーセ一人になった。
「第一の月」 アビブの月。ニサンの月。捕囚後のヘブライ人の宗教暦の1月。太陽暦では3月と4月。
「ラメセス」 エジプト、ゴシェンの北。ヘブライ人が強制労働をさせられて建設した町。エジプトでもっともよい地。ヨセフの家族が住んだが、のちにエジプト脱出の出発点となった。
ヘブライ人は、ラメセス2世に使われて、倉庫、神殿、ピラミッド、スフィンクスなどを建設した。聖書巻末地図2参照。
「過越」 イスラエルの民がエジプトから救い出されたことを祝う祭。
神がエジプト人を殺そうとしたとき、イスラエルの民が住んでいる家の鴨居と入り口の2本の柱に羊の血を塗っておけば、神はその家を過ぎ越して行かれたことを記念する祭。
「主の撃たれた」 神の殺された。
「初子」 人であれ家畜であれ、最初に生まれた子ども。
「神々」 異教の神。
(11)第一段階(33章5〜15節)
聖書巻末地図2参照。
「スコト」
@ ヨルダン川の東、ガド族の割り当て地。
A 当時の下エジプト第8州の首都。
ここではAを指す。
「エタム」
@ シュルの荒れ野の端。
A サムソンが住んだ岩の裂け目。
B シメオン族の町の一つ。
C ベツレヘムとテコア間にレハブアムが建てた町。
ここでは@を指す。
「バアル・ツェフォン」 イスラエルの民が葦の海を渡る前に宿営した付近。
「ピ・ハヒロト」 イスラエルの民が葦の海を渡る前に宿営した場所。
「ミグドル」 イスラエルの民が葦の海を渡る前に宿営した場所。
「マラ」 そこの水は苦かった(マラ)が、モーセが、神に示された一本の木を投げ込むと、水が甘くなった(旧約聖書出エジプト記15章22〜25節)。
「エリム」 葦の海を渡ったイスラエルの民が2番目に宿営した場所。
「葦の海」
@ イスラエルの民が渡った海。旧約聖書出エジプト記14、15章に記されている奇跡が起こった場所。
A 紅海(スエズ湾)。
ここでは@を指す。
「シンの荒れ野」 イスラエルの民が通過した荒れ野。
「ドフカ」 シナイ山の北西約の地。イスラエルの民が宿営した場所。
「アルシュ」 イスラエルの民が宿営した場所。
「レフィディム」 シナイ山の北西にある平原。イスラエルの民が宿営した場所。
メリバの水の奇跡があった場所であり、アマレクとの戦いに際して奇跡があった場所でもある(旧約聖書出エジプト記17章)。
「シナイの荒れ野」 シナイ山のふもとの荒れ野。
(12)第二段階(33章16〜18節)
「キブロト・ハタアワ」 シナイ山とハツェロトの間にあった。
「ハツェロト」 パランの荒れ野、シナイ山の北東約60キロメートルのあたりと推定される。聖書巻末地図2参照。
「リトマ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
(13)第三段階(33章19〜40節)
「リモン・ペレツ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「リブナ」
@ イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
A ヨシュアが戦って得た地。
ここでは@を指す。
「リサ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「ケヘラタ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「シェフェル山」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「ハラダ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「マクヘロト」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「タハト」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「テラ」
@ アブラハムの父。ウルからカナンへの移住の途中ハランで死んだ。
A イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
ここではAを指す。
「ミトカ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「ハシュモナ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「モセロト」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「ベネ・ヤアカン」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「ホル・ギドガド」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「ヨトバタ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「アブロナ」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「エツヨン・ゲベル」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した場所。
「ツィン」 死海の西南の荒れ野。聖書巻末地図2参照。
「カデシュ」 パレスチナ南端のパランの荒れ野にあった土地。聖書巻末地図2参照。
「エドム」
@ イサクの長子で、ヤコブの兄。エサウの別名。
A エサウから出た氏族名。
B パレスチナの南南東、死海の南からアカバ湾に至る地域。聖書巻末地図2参照。
ここではBを指す。
「ホル山」
@ エドムの国境の山。聖書巻末地図2参照。
A カナン北境の山。
いずれも正確な位置は不明。
ここでは@を指す。
「第五の月」 アブの月。捕囚後のヘブライ人の宗教暦の5月。太陽暦では7月と8月。
「カナン」 現代のパレスチナ。
「ネゲブ」 ヘブロン南方の放牧地帯。聖書巻末地図2でカナンと記されているあたりを指す。
「アラド」 ベニヤミンの子孫ベリアの子。家系の長。
(14)第四段階(33章41〜49節)
「ツァルモナ」 イスラエルの民がホル山を旅立ってから宿営した場所。
「プノン」 イスラエルの民が荒れ野で宿営したエドムの町。
「オボト」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した地。プノンの西22キロ。
「イイエ・アバリム」 イスラエルの民が荒れ野で宿営した地。
「ディボン」
@ ユダ領の南方、エドムに近い町。
A ガド領の町。アルノン川の北6キロ、死海の東18キロ。
ここではAを指す。
「アルモン・ディブラタイム」 イスラエルの民が荒れ野で宿営したモアブの地。
「アバリム山」 モアブ高地の西端にある山岳地帯。死海の水面から平均1000メートルのモアブ高地から、さらに200メートル隆起している。アバリムさん山の主峰ネボ山(ピスガ山)でモーセは死ぬ。(聖書巻末地図2参照)
「エリコ」 死海(塩の海)に注ぐヨルダン河口から北西約16キロにある、堅固に城塞化された町。聖書巻末地図2および3参照。
「ベト・エシモト」 イスラエルの民がモアブで宿営した地。ヨルダン川を渡る前の最後の宿営地。
「アベル・シティム」 イスラエルの民がモアブで宿営した地。ヨルダン川を渡る前の最後の宿営地。
この地で、モアブ王バラクは、イスラエルに対して自国の危険を感じ、占い師バラムの力を頼んだが失敗に終わった(民数記22〜24章)。
(15)偶像破壊命令(33章50〜56節)
「鋳像」 金属を溶かして造った像。
「嗣業」 相続人が受け継ぐ財産。神から与えられる土地。
イスラエルは、ここで初めて、アブラハム以来の約束の土地を与えられる。妻サラが死んだ時、アブラハムは、ヘブロン(聖書巻末地図3参照)に墓所を買い、そこに葬った。そこだけが、カナンでイスラエルが所有する唯一の土地であった。しかし今や、カナン全土が与えられることになる。
特註 神話と紛争
1.紛争の過去と現在
紀元67年、イスラエルの民はローマ帝国に対する反乱を起こします。これを第一次対ローマ戦争と言います。しかし敗退し、ローマ軍がエルサレムの第二神殿を完全に破壊しました。犠牲者は数十万人から一千万人とも言われます。ユダヤ人は追放され、または奴隷として売られてゆきました。ここから、ユダヤ人のディアスポラ(離散)の長い歴史が始まります。
11世紀には、教皇ウルバヌス二世の宣言に始まる十字軍は、表向きのスローガンは、イスラム教徒からの聖地エルサレム奪還でしたが、教皇がひそかに求めていたのは、教皇領の拡大と貿易による富の独占であったと言われます。エルサレムに居住していたイスラム教徒とユダヤ人は、キリスト教の名において、ことごとく殲滅され、ヨーロッパにいたユダヤ人も大量に虐殺されました。以後13世紀のチュニスでの十字軍の敗退までの二百年間、8度の遠征が行なわれましたが、ほぼ失敗に終わりました。十字軍の歴史は、殺戮と略奪の歴史と言えるでしょう。
16世紀に始まった宗教改革が拡大すると、ヨーロッパの各地でカトリックとプロテスタントの戦争が起こりました。なかでも、1572年8月23日、聖バルトロマイの祝日から翌24日にかけて、フランス各地で、カトリック教徒がプロテスタント教徒を虐殺した「サン・バルテルミの虐殺」は、犠牲者の総数三万人とも十万人とも言われます。
時代が下って、第二次世界大戦は、ドイツによるユダヤ人迫害では、六百万人とも言われるユダヤ人が惨殺されました。
その後も世界各地で、多くの宗教紛争により、幾多の人命が失われて来ました。
そして、2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センタービルに、ハイジャックされた2機の旅客機が突っ込み、一瞬のうちに2465人の命が失われました。アメリカは、これをイスラム原理主義過激派によるテロと断定し、アフガニスタンのタリバン政権を軍事攻撃して崩壊させました。ついでアメリカとイギリスがイラクに軍事攻撃を加え、陥落させました。しかし、イラク国内では、反米勢力による攻撃や、宗派・民族間の対立によるテロはいっこうに収まらず、イラク民間人の死者は、15万人から22万人と言われています。
2.宗教と「聖戦」
歴史を顧みても、世界のどの国でも、宗教はたしかに紛争の火種をまいてきました。しかし、もともと宗教は争いを好むものなのでしょうか。それとも平和を願うものなのでしょうか。
「イスラム教は、『右手にコーラン、左手につるぎ剣』と言っているから、好戦的な宗教なのだ」と言ってきたのは、欧米のキリスト教徒でした。ほんとにそうなのでしょうか。
コーランには、「いやがる人々を無理やりに信者にしようとしても、できることではない」とか、「叡智とよき忠告とをもって、イスラムの教えに人々を招きなさい」と書いてあります。つまり「改宗か、それとも死か」と言っているのではないのです。穏健な説得が薦められているのです。
また、自爆テロなどの過激な手段を取るアルカイダの主張は、「イスラム教徒の土地を占領している異教徒に対し、武器を取って戦え。それが「神のための戦争」、聖戦(ジハード)だ」というものですが、イスラム教徒の中には、そういう考え方を支持しない人が多いと言われます。
自爆テロをする人たちは、聖戦で死んだら天国に行けると信じています。そういう狂信に駆り立てるものは何でしょうか。
3.原理主義
原理主義は、「ファンダメンタリズム」の訳語として使われています。キリスト教では根本主義とも呼ばれ、イスラム教ではイスラム復興運動と呼ばれています。聖書(特に旧約聖書)、コーランなど、聖典(正典)にしる記された教義や規範などを、そのままの形で、現代生活の中に実現させようとする運動をさ指します。
キリスト教のファンダメンタリズムの場合、その根拠とするところは、「聖書逐語霊感説」であって、聖書は一字一句神からの霊感によって書かれたものであるとするものです。キリスト教では、セヴンスデイ・アドヴェンティスト(SDA)が、その一つの例です。SDAは、1845年アメリカでバプテスト派牧師ミラーによって始められました。再臨、土曜安息、浸礼、十一献金を強調し、旧約聖書レビ記11章などに記されている、食べてよいものと、食べてはいけないものを厳格に守ります。
ファンダメンタリズムは、社会の中で、自己のアイデンティティーを確立し、それを他にむかって主張しようとするものですから、当然、排他的、閉鎖的、急進的、攻撃的態度を生みます。そして、過激な宗教抗争とテロが発生する土壌を現代世界に提供しています。こういった狂信的態度の背後には神話というものがあるのです。
4.神話
では、そもそも神話とは何でしょうか。
私たちは日常「お日様が東から昇って、西に沈む」と言います。そして、自分の言っていることが、どこかおかしいとか、何か間違ったことを言っている、というふうには思いません。他の人も、私たちが、天動説をとなえているとも、非科学的だとも言わないでしょう。たしかに、地球の自転の結果、日が昇ったり沈んだりするように見えるだけです。そこで、「日が昇った」ということを、あえて「科学的」に言おうとして、「私が乗っかっている地球が一回りした。そのため、私が地球上に立っている地点を基準点とすると、太陽が、「東」という相対的な方向から昇っているように見えるが、実は私の立っている地点が、「東」という相対的な方向へ向かって回転しているのだ」と言ったとすると、聞いている人は、「この男はアタマがおかしいんじゃないのか」と思うでしょう。「日の出」や「日没」というような表現を使わないで、地動説的に説明しようと必死になればなるほど、周りの人は、私たちが何を言っているのか、ますますわからなくなってしまうでしょう。
「東」と言っても、「西」と言っても、「昇る」と言っても、「沈む」と言っても、すべて相対的な表現なのです。わたしたちが生きている世界は「相対」の世界なので、そこには、「絶対的な東」も、「絶対的な西」もありません。「上」と言っても、「下」と言っても、何かを基準として、「その上」、「その下」と言えるだけで、「絶対的な上」もなければ、「絶対的な下」もないのです。
私たちが、日常使っている言葉は、すべて、相対世界の言葉ですから、絶対的なものを表現しようとすれば、「神話」という形式を使わざるを得ません。
地動説も、天動説も、天体の動きを理解し、表現するための「お話」に過ぎません。「お話」は、「道具」であって、絶対的な真理ではないのです。それらは、いわば「科学的」という包装紙で格好をつけているだけで、どれも中身は「神話」なのです。地動説が「科学的」であって、天動説は「非科学的」であり、「迷信」であると決め付けたりするのは、自分の立場が「絶対」であり、「不動」であるとする態度であって、それこそまさに「天動説的」態度と言わねばなりません。本来「科学」とは、あらゆる常識を疑ってかかるところから始まるのです。「科学」が「常識」となってしまっている場合には、その「常識」を疑ってゆかなければ、本当の「科学的態度」とは言えません。
たしかに、現代では、地動説が「通説」となっています。「通説」に異を唱えるのは、よほど非常識な人間か、自信のある人間でしょう。なぜなら、「通説」は、たいてい「自称科学者」のお墨付きで権威付けられていると思われているからです。でも、いったい何人の人が、自分で「通説」を検証したのでしょうか。「みんながそう言うから、そうなんだ」で済ませているというのが実情ではないでしょうか。地球が太陽の周りをグルグル回っているのを見た人があるでしょうか。宇宙飛行士でも、自分の乗っている宇宙船を基準にして、地球と太陽の動きを見ているだけで、見えない部分は仮説で補っているので、全体を見ているような気がするだけではないでしょうか。そもそも人間は、宇宙全体をひと目で見ることはできないのです。「宇宙全体」という「神話」をでっち上げているにすぎません。
宗教的な真理も、理解や説明を超えたものですから、神話を使って語らざるを得ません。しかし、その神話どうしが衝突して、殺戮と破壊を招くとすれば、放置することはできないのです。
5.非神話化
「神話」という言葉は、ここでは、人間の認識と表現を超えたものを指し示す「比喩」、または「幼児語」という意味です。例えば「ワンワン」とか「ニャンニャン」のようなものです。
神話は、人間が、霊的なものを理解できるまでに成長する期間、間に合わせに使われる「符牒」で、キリストもよく「たとえ話」を語られましたが、これも神話の一種と言っていいでしょう。
神話という「離乳食」は、人間が人間であるかぎりは、絶対卒業することのできないものです。卒業できないかぎり紛争はなくならないでしょう。ではどうすればいいのでしょうか。
ドイツの神学者ブルトマン(1884〜1976)は「非神話化」を提唱しました。聖書の枠組みとなっている古代の神話的世界観から、キリスト教の本質的メッセージ(福音)を取り出して、現代人にも通じる言葉で語りなおそうという試みです。
神話という「離乳食」を必要としない「大人」に成長するためには、自分の持っている神話に気づかなければなりません。キリスト教のみならず、世界のあらゆる神話から自由になることです。現代人は、宗教的神話だけでなく、「政治的神話」、「科学的神話」、「常識という神話」など、無数の神話の中で「神話漬け」になっています。「名誉」、「金」、「健康」、「快適」、「快楽」なども、気づかぬ間に現代人をがんじがらめにしている神話たちです。
大切なことは、神話と戦い、神話を捨てるのではなく、神話を通して発せられている「いのちのメッセージ」(福音)を聞き取ることです。「いのちのメッセージ」によって神話を正しく認識し、神話から解放されること、それが「非神話化」ということです。
引用・参考文献(補遺)
「原理主義とは何か アメリカ、中東から日本まで」(講談社2003年)
「世界の宗教 総解説」(自由国民社2001年)
「Books Esoterica別冊[図説]世界の宗教紛争」(学習研究社2002年)
「現代用語の基礎知識」(自由国民社2008年)
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